A01 質感の計測と表示に関わる工学的解析と技術
A01-1 質感認知に関わるコンピュータビジョンと情報論的解析
研究代表者 | 佐藤 いまり(国立情報学研究所・准教授) | ![]() |
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研究分担者 | 佐藤 洋一(東京大学生産技術研究所・教授) | ![]() |
研究内容
コンピュータグラフィックス(CG)を用いて現実感の高い映像コンテンツを生成するためには,その入力としてシーンの物体(形状や反射特性)および光源分布に関する精密なモデルを必要とする。描画技術の急速な発展の一方で,実物体が持つような複雑な質感の生成を追求すればするほど,モデルの構築が難しいということが問題となってきている。
本計画班では,人間の質感知覚のメカニズムの解明に基づき,実在物体の形状および質感を画像のみを用いて推定する技術の開発と物体の質感を効果的に伝える画像加工技術の開発を行う。特に,B01班により明らかにされる人間の質感判断の特性や観察環境に対する質感知覚の依存性に関する知見やC01班により明らかされる人間の質感知覚と関係のある映像特徴を積極的に活用し,効果的な質感のモデル化・生成技術の開発に取り組む。また,他研究班が必要とする質感の映像刺激を合成する技術や実在物体の測色技術(分光反射率の計測技術)を開発し本領域の要素技術として提供する。
A01-2 質感認知に関わる記録・合成と表示
研究代表者 | 日浦 慎作 (広島市立大学大学院情報科学研究科・教授) |
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研究分担者 | 岩井 大輔(大阪大学大学院基礎工学研究科・准教授) | ![]() |
研究内容
品質管理やデジタルアーカイブ,商取引など様々な場面で質感の正確かつ高度な獲得・再現が求められている。しかし従来,これらの技術開発は質感そのものの向上を目的に進められたわけではなく,高画素化・高ダイナミックレンジ化など物理的高度化の結果,付随的に向上すると期待されていたに過ぎない。そこで我々はB01およびC01班が取り組む認知科学・脳神経科学からの知見をもとに,正確かつ高度な質感を記録・合成・表示するための合理的な技術を開発する。また同時にB01およびC01班が必要とする,高い再現性と自由度をもつ刺激を生成・提示するための技術協力も行う。
単なる高画質の写真は対象物体の特定条件(照明,観察方向)の像に過ぎず,質感を余すことなく記録したことにはならない。そこで我々はコンピュテーショナルフォトグラフィ分野で蓄積されつつある自由視点・自由照明条件下の像の生成とそのための光分布記録手法に,物体表面における拡散反射と鏡面反射成分の分離による光沢感の制御,表面反射と表面下散乱の分離に基づく透明感の制御技術を組み合わせ,様々な条件下における質感の記録および表示に加え,実物体を元にした仮想的な質感の合成技術を開発する。これらの技術はB01およびC01班の実験における刺激提示に活用する。
次にディスプレイ技術については,物理的に高解像度・高ダイナミックレンジのデバイスをやみくもに開発するのではなく,B01およびC01班で得た知見を利用しながら合理的かつ実用的な表示技術の開発を行う。例えば既存の画像提示技術でも人間の視覚特性(仮現運動や色分解能特性など)が最大限に利用されているが,こと質感提示についてはデバイスの各性能指標と質感提示の正確さ,応用分野との適合性の関係については十分明らかにされていない。そこで我々は反射率可変デバイス(電子ペーパ等)とプロジェクタアレイにより構成した超高解像度・超高輝度・超高ダイナミックディスプレイを用いた実験により,自動車内装や服飾品など各分野で満たされるべきディスプレイのパラメータを特定し,またそのディスプレイをB01およびC01班における実験に提供する。