D02-4 ⾝体運動の誘発に関わる⾳楽の質感とその神経基盤
白松 知世
東京大学大学院情報理工学系研究科
本研究は,音の質感として,音楽のリズムに注目する.なぜ,音楽のリズムは,我々の身体運動を誘起するのに,他の動物種では必ずしも身体運動を誘起しないのだろうか? この問いに対し,ラットの聴覚野の脳活動計測と運動計測に基づいて,身体原因説と脳原因説を検証する.行動実験と生理実験では,どのようなリズムが,最も身体運動を誘起するか,また,どのように聴覚野の神経活動を誘発するかを調べ,両者の関係性を探る.身体原因説が正しい (人間文化の音楽がラットの脳にも訴求力を発揮する) 場合,ラットの姿勢を変えたり,頭部に重りを設置したりして,身体構造の共振周波数を変化させ,リズム運動の強調を試みる.
脳原因説が正しい場合,ラットの聴覚野の神経活動に基づき,ラットの脳に最も訴求力を発揮するラット版音楽様刺激を探索する.本研究は,音楽における音の質感を題材に,質感を理解するうえで,感覚系に加え,感性的価値や情動,身体反応,行動などの重要性を示す.