文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A) 「実世界の奥深い質感情報の分析と生成」


D02-5 ヒトの脳における多様な匂いの表象の時空間的解明


岡本 雅子 東京大学大学院 農学生命科学研究科応用生命化学専攻 生物化学研究室

匂いは生活環境中に常に存在し、「コーヒーの匂い」など、明確に認識されるものから、「なんとなく安心する」など、必ずしも意識に上らない影響も含め、ヒトの心理や行動に影響を及ぼしていると考えられる。しかし匂いの知覚の構造はいまだ明らかになっておらず、匂いがヒトに及ぼす影響についても不明な点が多い。本研究では、匂い呈示時のヒトの脳活動を、時間的精度に優れた脳波(EEG)と、空間的精度に優れた機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測し、匂いの質や印象が、いつ、どの脳領域で、どのように表象されるかを明らかにする。また、映画の視聴のような比較的「自然」 な実験課題に匂いを付与し、その際の脳活動を計測することによって、匂いが、自然で多感覚な情報処理に及ぼす影響を解析する。これらにより、脳内の表象という観点から、匂いの知覚/印象の構造を推察するとともに、脳活動の観点から、匂いがヒトに及ぼす影響について明らかにすることを目指す。