文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A) 「実世界の奥深い質感情報の分析と生成」


D02-11 モノの性質を深く知る身体動作:工芸における身体技法の現場計測による検討


野中 哲士 神戸大学大学院人間発達環境学研究科

本研究では,長期的に再帰するモノを扱う伝統技能において,(1)モノの性質を深く知る身体技法はどのような特徴を見せ,どのようにして生成するのか,また(2)モノと接するところにしか姿を現すことのない身体技法はいかにして世代を超えて個体間で伝達され得るのかという2つの問いを,粘土を成形する陶芸技能を対象として検討する.研究1では粘土を成形する際の手の動作のヴァリエーションとその時系列変化を,動的に変化する形態発生と照らし合わせ,形態発生のどのような局面に応じてどのような手の動作が見られるのか,またモノに接する手の動きに対して群生環境や師弟関係などがどのような仕方で影響するのかを,異なる社会的背景をもつ職人の比較から検証する.研究2では,機械的安定性の異なる形態を模倣する際に,形態発生の軌道のヴァリエーションにどのような違いが見られるのか,またその違いに群生環境がどのように影響するのかを検証する.