文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A) 「実世界の奥深い質感情報の分析と生成」


D01-9 やわらかさ知覚原理の新仮説: 硬い表面をやわらかく感じさせる低周波摩擦変動


岡本 正吾 東京都立大学

ヒトが物を擦るときにやわらかさを判断する原理は,物を押すときのそれとは異なるのではないか? われわれは自身らの近年の発見から,指で物の表面を擦ったときに生じる摩擦の低周波変動が,擦り動作でのやわらかさを感じさせる要因になっているという仮説をたてている.本研究の目的①は,この仮説の正しさを強い証拠を伴って示すことであり,平らなパネル上で摩擦を制御する静電摩擦触感ディスプレイを活用した心理物理実験によって達成する.目的②は,この仮説原理を実際の製品に活用する方法と,その効果を明らかにすることである.摩擦抵抗を変化させるための緩やかな凹凸面を有する樹脂表面が,平らな表面よりもやわらかく感じられる現象を追究し,表面の最適設計を実施する.やわらかさ知覚という普遍的な質感認知に関する新しい仮説の探究によって,質感理解と質感設計の両輪を推し進める.