領域メンバーの藤田一郎さん(大阪大学)らの論文がPhilosophical Transactions of the Royal Society Bにオンライン掲載されました

公募研究D01班員 藤田一郎さんら(大阪大学大学院 生命機能研究科/ CiNet)の論文がPhilosophical Transactions of the Royal Society Bにオンライン掲載されました

*******
2つの目で見る世界は、片目では得ることのできない奥行き感を持っています。両眼立体視と呼ばれるこの知覚能力は、物の立体構造を知ることや、それに基づいて物の操作をしたり、体を移動したりする際に働いています。また、質感の知覚にも影響を与えます。本論文では、奥行きの算出において、パラレルに働く2つのプロセスがあり、それぞれの出力を足し合わせたものが奥行きの知覚に反映されていることを提唱しました。

左右の目は横に6―7センチ離れていますので、世界を異なった角度から見ています。その結果、外界像は左右の網膜像で異なります。個々の物体の像は、その距離に応じて左右の目で、ほんのわずかですが、ずれています。この位置ずれ(両眼視差)を脳は検出し、それを奥行きに変換します。この時、右目の像と左目の像を正しく対応づけなくてはなりません。両眼視差の最初の検出過程(相関計算)では、この対応づけは必ずしも完璧ではなく、その後、正しい対応の両眼視差だけを伝えるように情報の変換が行われます(対応計算)。本論文では、ヒトやサルの奥行き知覚において、最初の不完全な相関計算の信号も対応計算の信号とともに知覚に利用されていること、ただし、視覚環境の変化に伴い、その貢献の程度が変わることを示しました。また、対応計算の重要なステップが、V4野と呼ばれる大脳皮質視覚領野で行われている証拠を提出しました。

図は、相関計算と対応計算の奥行き知覚への貢献度を見積もるために、私たちが考案した視覚刺激を、単純化のために一次元刺激として模式化したものを示しています。

FujitaDoiFig1(20151016).jpg

論文へのリンク:
http://rstb.royalsocietypublishing.org/content/371/1697/20150257

藤田先生アドレス.png にリクエストいただきますと、本論文のpdfファイルをお送りします。(アドレスは画像です)

*******
雑誌:Philosophical Transactions of Royal Society B
タイトル:Weighted parallel contributions of binocular correlation and match signals to conscious perception of depth
巻号:vol. 371 doi:10.1098/rstb.2015.0257
著者:Ichiro Fujita, Takahiro Doi

*この論文は、"Vision in our three-dimensional world" (3次元世界における視覚) と題された特集号に掲載されています。