D02-11 アンビエント音響としての謡曲が持つ幽玄の理解
木谷 俊介
北陸先端科学技術大学院大学
本研究の目的は、ヒトに幽玄を知覚させる謡曲特有の物理特性を明らかにすることです。謡曲を耳にしたとき、おそらく多くの日本人が能特有のものとして認識できると思います。世阿弥は「能では幽玄であることが第一に大事である」と述べています。奥深くはかり知れない様子を表す「幽玄」という言葉は、まさに日本の伝統的な深奥質感のことです。「日本的な美である幽玄を知覚させる物理特徴は何であるか」を明らかにするために、謡曲に含まれるヒトの発声だけに着目するのではなく、舞台空間および能面によるアンビエントの変化にも着目します。本研究では、スペクトル変調成分(声帯および声道の動きと対応)、および時間変調成分(アンビエントの変化に対応)を同時に分析できるスペクトル・時間変調(STM)情報に着目します。STM情報を変化させたときに幽玄の知覚がどのように変わるかを知覚実験によって明らかにします。