文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A) 「実世界の奥深い質感情報の分析と生成」


D02-5 経験を通した音楽の質感知覚と誘発運動の獲得過程


白松 知世 東京大学大学院情報理工学系研究科

リズムは音楽の質感の一つであり,リズムによる誘発運動は,音楽のジャンルを越えた普遍的な特徴の一つである.応募者らは前回の公募研究で,ヒトの音楽のリズムが,ラットの脳に訴求し,運動を誘発することを明らかにし,リズム知覚の神経基盤を解明する動物モデルの研究基盤を整えた.本研究では,領域間連携を通した新しい行動計測技術と,神経活動の解析技術とを新たに加え,聴覚と運動におけるリズム知覚が生得的な能力なのか,それとも,経験を通して後天的に獲得されるのかという,質感研究の主要な問いに答えることを目指す.具体的には,音楽への曝露や,運動の繰り返しが,聴覚野のリズム情報処理と,誘発運動パターンをどのように変化させるかを調べる.音楽聴取や身体運動といった,実際の質感経験が,脳と身体を介して,音楽の感性的価値を成熟させていく過程が明らかになれば,実世界における質感情報処理の理解に大きく貢献すると考える.