文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A) 「実世界の奥深い質感情報の分析と生成」


D02-18 おいしさを生み出す風味知覚の脳内メカニズム


塩谷 和基 立命館大学 生命科学部

風邪をひいて鼻が詰まったときに、食べ物がおいしくないと感じる経験がよくある。一般的においしさというものは、味覚だけで決まるものだと思われている。しかし、ヒトが食べ物をおいしいと感じるためには、味だけでなく、食物の香りや舌に触れた食感などを含めた統合的な質感が必要である。その中でも、食べ物の香りと味によって作られる風味(フレーバー)という質感がおいしさを感じるためには重要である。特に、風味の主役は、口の中から鼻へと抜ける香りである。そのため、鼻が詰まっている状態では、風味を感じることができず、おいしさを感じることができない。本研究は、電気生理学的手法と光遺伝学的手法を用いて風味の脳内情報処理機構を明らかにすることを目的とする。具体的には、げっ歯類の風味弁別課題を構築し、その課題遂行時に見られる風味に重要な内側前頭前野(medial prefrontal cortex, mPFC)の神経細胞の応答特性を解明すると共に、光遺伝学を用いて、感覚入力からmPFCへの神経回路が風味知覚に及ぼす影響を明らかにする。